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ピアズ・アンソニイ
Piers Anthony
(1934〜 )
 英国生まれで、フロリダ州在住。元来はSF書きで、『Chthon』で1967年のネビュラ賞と1968年のヒューゴー賞の候補、1970年には『Macroscope』で再びヒューゴー賞の候補になりましたがどれも受賞は叶いませんでした。ザンスの登場人物の一人、ヒューゴーがうすのろなのは、このことに対する当てつけでしょうか・・。
 ユーモア・ファンタジーの『魔法の国ザンス』シリーズで、アンソニイは熱心なファンをたくさん獲得しました。アンソニイ自身、ファンから送られてくるアイデアや駄洒落、語呂合わせなどを積極的に取り入れたりして交流を楽しんでいるようです。
カメレオンの呪文人喰い鬼の探索マーフィの呪い
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カメレオンの呪文 (魔法の国ザンス1)
A Spell for Chameleon
(1977)
山田 順子訳/ハヤカワ文庫FT (1981)/ISBN 4-15-020031-9
story 魔法が当たり前のように存在する国で、ビンクは自らの魔法の力を見出せないでいた。年老いた嵐の王の治世下、ザンスの住人たちは成人するまでに自らの魔法の力を示さないと国外に追放されてしまうのだ。
 国外は魔法のないマンダニアと呼ばれる世界。ザンスとマンダニアの境界にはシールドの魔法が張られていて、追放者は二度とザンスには戻れない。ビンクは知識の魔法使いハンフリーの元を訪ね、自分の力が表に現れない何かであることを知るが、嵐の王はビンクにザンス追放を言い渡す。
 ザンスを追われ、マンダニアの地に足を踏み入れたビンクは、過去ザンスに恐ろしい災厄をもたらしたという悪の魔法使いトレントに出会うが・・・。

review ザンスシリーズの第一作。ザンスはファンタジーで僕が一番好きなシリーズです。アンソニイは特にプロットとユーモアに秀でた作家で、書く意欲が旺盛なのがうらやましい。このシリーズにしても三部作の予定でしたが、既に10作以上の長編シリーズとなっています。
 第8巻『幽霊の勇士』あたりから面白味は下降線をたどります。理由のひとつは、アンソニイの作風が主に自己探求・自己発見をテーマとしていることです。ザンスそのもののアイデンティティがほぼ確立されたことによってテーマ性が薄れてしまったのです。また、ファンサービスも理由のひとつになりうるでしょう。アイデア,駄洒落,語呂合わせなどが前にも増して作品中に散りばめられるようになりました。日本語の訳文で表現しづらい部分が増えたわけで、訳者の苦労もしのばれます・・。
 さて、『カメレオンの呪文』は、今読み返してみるとちょっとカタイかな。でも、これから読もうという方はお気を楽に。英国幻想文学賞を取ったくらいですから内容は保証付きです。
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人喰い鬼の探索 (魔法の国ザンス5)
Ogre,Ogre
(1982)
山田 順子訳/ハヤカワ文庫FT (1986)/ISBN 4-15-020090-4
story 人喰い鬼のメリメリは、菜食主義の人喰い鬼と人間の女優との間に生まれたハーフ。人間たちの間で生活していくうちに自分でも理解できない悩みを抱えてしまったメリメリは、知識の魔法使いハンフリーの助言で、同じく悩みを抱えた少女タンディの旅に同行することになる。旅の途中で知能蔓に巻きつかれたメリメリは知能が格段にアップ。次々と現れる異種族の女性たちの悩みを解決しながら探索を続けていく。果たしてメリメリの抱える悩みとは何なのか? タンディを救うことはできるのか? 催眠ひょうたんの中に存在する夢馬たちの世界やザンスの奥地での冒険を通してメリメリとタンディの心は・・・。

review ザンス・シリーズの中で一番気に入ってるのが、この『人喰い鬼の探索』。ザンス内の現実世界と催眠ひょうたんの世界とが同時並行で展開していくのは月並みだけどいい。読者を楽しませる数々の仕掛けはアンソニイの真骨頂。ラストシーンが静かに感動的。
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マーフィの呪い (魔法の国ザンス12)
Man from Mundania
(1989)
山田 順子訳/ハヤカワ文庫FT (1999)/ISBN 4-15-020264-8
story 知識の魔法使いハンフリーとその一家の失踪から、はや七年の月日が過ぎた。三年前のドルフ王子による捜索の旅では、当時わずか九歳だったドルフ王子が二人の婚約者を連れ帰る結果となり、ハンフリーの行方はわからずじまいだった。今度はアイビィ王女が、弟の見つけたヘブン・セントを作動させ、ハンフリー捜索に乗り出した。ヘブン・セントはハンフリーが残した唯一の手がかりなのだ。ところが、ヘブン・セントがアイビィを連れていった先は、魔法のないマンダニア、しかも大学の英文学部に通うグレイという名の学生が住むアパートだった。アイビィはグレイの協力を得て、なんとかザンスへ帰還しようとするが・・・。

review ザンス・シリーズは第10巻から新たなシリーズに入り、《よき魔法使いハンフリーとその一家の失踪》という謎が解決されないまま次巻に引き継がれていくスタイルになりました。
 旧シリーズ(第1〜9巻)では各巻が完結した物語でしたから、新シリーズには何かもやもやしたものを感じていました。ですが、本作に至ってようやく呑み込めてきました。元々、このシリーズは各巻の主人公の自己探求と同時に、舞台となるザンスそのものの探求がテーマとなっていました。未踏の奥地や過去の世界、夢の世界、ザンスの外側の世界と様々な角度からザンスは語られてきました。新シリーズの《謎》は、この代わりとなるものなのです。
 ところが、本作『マーフィの呪い』で、アンソニイはマンダニア人のグレイ(現代のアメリカ人)の視点から見たザンスという新たな角度からザンスを語っています。次作『セントールの選択』では異世界から迷い込んだ少女の視点から語っていますし・・。そして、その方が読んでいて楽しくて面白いのです。どうやらザンスの探求というテーマは外せないようです。
 また、頑なに魔法を信じようとしないグレイと17歳になったザンスの王女アイビィの恋愛も見所のひとつでしょう。自分では平凡な学生にすぎないと思っているグレイ。彼の誠実な人柄がアイビィに好印象を与えていきますが、それは読み手にとっても同様でしょう。