タニス・リー
Tanith Lee (1947〜 )冬物語|ゴルゴン
冬物語The Winter Players, Companions on the Road (1976,1975)
室住 信子・森下 弓子訳/ハヤカワ文庫FT (1982)/ISBN 4-15-020043-2【収録作品】
- 冬物語 The Winter Players (1976)
- アヴィリスの妖杯 Companions on the Road (1975)
聖遺物を守る神殿の巫女オアイーヴ。古から伝わる聖骨のことは、代々の巫女しか知らないはずだった。だが、聖遺物の秘密を知る男が彼女の元に現れた。男は狼の皮をまとい、瞳や髪の毛の色に合わせたかのような灰色ずくめの服装だった。警戒していたにも関わらず、オアイーヴの魔法は打ち破られ、灰色の男は神殿から聖骨を盗み出した。オアイーヴは聖骨を取り戻すため、神殿を後にして追った・・彼女をあざ笑うかのように残された、男の痕跡をたどって。
本作品には、『冬物語』『アヴィリスの妖杯』の二つの中篇が収められています。
タニス・リーの文体は、まるで黒布の上に散りばめられた輝く宝石のようです。リーはよく宝石類を表現に用います。他の作家と比べると、色彩の豊かさがタニス・リーの紡ぐ文体の特徴の一つと言っていいでしょう。『冬物語』においても、プロットには関与しないものの、色彩感覚が物語を形作る上で重要なファクターとなっています。終盤までの抑えたモノトーンの世界が、ラストシーンで効果的な作用をもたらしています。『アヴィリスの妖杯』はまさしく宝石のオンパレードです。至るところで宝石類が表現に用いられています。
両作品とも、完成度の高い作品に仕上がっています。『アヴィリスの妖杯』は中世の「カンタベリー物語」あたりに根っこがありそうです。
しかし、『冬物語』が英国ではジュブナイル(児童図書)として発表されただなんて! 大人が読んでも歯ごたえのある作品なんですが。
ゴルゴンThe Gorgon and Other Beastly Tales (1985)
木村 由利子・佐田 千織訳/ハヤカワ文庫FT (1996)/ISBN 4-15-020217-6【収録作品】
- 天国の門 Angel Fix (1974)
- ゴルゴン The Gorgon (1982)
- アンナ・メディア Anna Medea (1983)
- にゃ〜お Meow (1981)
- 狩猟、あるいは死−ユニコーン The Hunting of Death:The Unicorn (1984)
- マグリットの秘密諜報員 Magritte's Secret Agent (1981)
- 猿のよろめき Monkey's Stagger (1979)
- シリアムニス Sirriamnis (1981)
- 海豹 Because Our Skins Are Finer (1981)
- ナゴじるし Quatt-Sup (1985)
- ドラコ、ドラコ Draco Draco (1984)
- 白の王妃 La Reine Blanche (1983)
赤錆色の髪をしたラウロは、ある夜、美しい白一色のユニコーンを見た。常に手の届かないものを渇望してリューリトンを奏でてきたラウロにとって、渇望するものが具現化したユニコーンを目にしたことは心に重くのしかかった。沈んだ表情で教会の階段にたたずんでいると、都の殿様が彼に声をかけた。ユニコーンを狩ろうではないか。ラウロは承諾し、案内役を引き受けた。 〜「狩猟、あるいは死―ユニコーン」
チェーン店の下着売り場に勤める“私”は、車椅子の美青年に恋をした。彼は冴えない中年の女性に連れられて、その瞳はどこか遠くを見つめているのだった。店は普段配達なんて請け負ったりしないのに、“私”は大胆にも海沿いの高台にある彼の家へと商品を配達に出かけた。 〜「マグリットの秘密諜報部員」
タニス・リーの紡ぎ出す幻獣たちの妖しくて不思議な物語、全11編。
本作品には幻獣夜話と副題がつけられていて、その名の通り各短編には魔性の獣たちが登場します。短編の一つ一つがリーらしく趣向を凝らした作品に仕上がっています。ゴルゴン,ユニコーン,半魚人にドラゴンと手垢のついた題材を扱うには、いかにして意外性とストーリー性を引き出すかが作品の生命線でしょう。この短編集に関しては、両方ともゆうに次第点を超えていると思います。
短編のうち幾つかは、話の展開が収束と別方向に向かっているように見えてとまどうものもありますが、きちんとつじつまがあって物語が結末を迎えるのはさすがです。「マグリットの秘密諜報部員」や「シリアムニス」なんかがそう。
ざっとこの短編集の作品を見渡して、一番好きな作品は「マグリットの秘密諜報部員」。
「猿のよろめき」と「ナゴじるし」の二作品はコメディ、「白の大妃」はファンタスティックでブラックなテイスト、そして「ドラコ、ドラコ」はヒロイック・ファンタジーを皮肉った作品です。